”われわれはこれから、
みなさんがいつも行きたいと仰っていた林道に行くところなんです。”
●未舗装の道路への逃避
最近、観光地がひどく混んでますね?賑わいすぎて何もかも煩わしく、観光客や物見遊山達からも逃げ出したい。
誰もいない所で、どっか遠い所に行って紅葉狩りをしたい。
そうでしたね?
●”この日本にある砂利とは本当にあるんですか?”
それでは、地図をご覧なさい。
今、”単線”と”破線”で示されたその世界に、我々は入っているわけです。
あなたがたの知る道路を突き抜けつつあるんです。
信号のないところ、踏切のないところ、交通地獄のないところ…
ごちゃごちゃ人間なんか全然いないところ。
要するに、息の詰まりそうな国道にさようなら
●こうして彼は念願の林道に入ったが,,,
そこには既に多くの原生生物(熊)がいて、子供(子熊)まで生まれていた。
かれらの生活は決して人間の世界の延長でも模倣でもデフォルメでもなく
全く野性的で激しいものだった。
●はれてくれ!(背後の気配が気になる濃霧)
その林道に
いつからだろうか、彼はこの現実の世界から脱出したいと考えていた。
その日の前日も、愚劣な会議に出て死ぬほど疲れていた。
それに、会社員としての彼はスランプ状態にあったのは事実である。
彼自身、地図の描いていている破線の道路への逃避を(平日中)、いつも夢見ていた。
しかし、身の危険が迫ると、夢見心地の世界と現実の境界は崩れ落ちた。
彼は、”晴れてくれ!”と叫びながら夢の世界(林道)を駆け抜けた。
”みなさん、
もしあなたが、理解ある異性や、温かいご家庭がおありでしたら
霧の林道は
”連れてってくれ、俺も連れてってくれ”
”連れてってくれ、どこへでも連れてってくれー!”
(平日における脳内の叫び)
”連れてってくれ、どこへでも連れてってくれー!”
~終~
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