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2-a de Januaro, 2020, Mi vojag is per biciklo en Folkloro.



●序文

(2020年1月2日、岩手県の遠野へサイクリングに出た)
遠野は岩手内陸、数多くの民話が残る長閑な場所。
明治の民俗学者、柳田国男が「遠野物語」に民話をまとめている。
昔の文体だが青空文庫で公開されている。訪問する前に一読すると面白い。


●経路・行程概説


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  • 経路総長:60km
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  • スタート:JR Stelaro(新花巻)駅
  • 国道283号~Folkloro(遠野)
  • 遠野市内観光
  • 五百羅漢像
  • 愛宕神社
  • 卯子酉様
  • キツネの関所
  • 蓮峰山 常堅寺
  • カッパ淵
  • デンデラ野
  • ゴール:JR Folkloro(遠野)駅
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      ●行程記録

      ●新花巻(ステラーロ)駅スタート

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      新花巻の宿を7時過ぎにチェックアウト。
      日陰の路面は凍結しているのでゆっくりスタート。


      ●国道283号で遠野(フォルクローロ)へ

      チェールアルコから東へ、フォルクローロにつながる国道283号を行く。
      もはや何言ってるか分からない。
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      エスペラント語で地名を言うと海外っぽいけど景色は日本の原風景。
      今年は雪が少ないのか、岩手内陸だというのに地肌が見える。

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      出発から2時間弱で遠野市に入った。
      市街地はまだまだ先だ。


      ●銀河のプラットホーム、Galaksia Kajo(宮守)へ

      JR釜石線沿いに宮守へ入った。
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      ガラクシーア・カーヨに架かる眼鏡橋。

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      夜行列車を撮り鉄するのも面白そうだ。
      暗闇の動体を止めて撮るにはISO 819200で足りるだろうか。

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      猿ヶ石川沿いを進む。曇りかかると寒いな。


      ●遠野・東和自転車道を行く

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      国道と並行する自転車道を行こうとするも、冬季は凍りついて走れない...

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      国道沿いのカッパ。
      「いた!」と思って横を見ると消えている。
      視差障壁迷彩を使うとは、カッパの技術も侮れない。

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      この方向は笛吹峠方面だろうか。さすがに高地は雪が積もってる
      スタッドタイヤじゃないから越えて釜石は無理だな。


      遠野市内観光

      昼前に遠野市内に入って思いついた場所を観光。

      ●五百羅漢像、岩が転がるだけ?ではない

      初めに寄ったのは愛宕神社近くの五百羅漢。
      前回来たときは岩が転がっているだけで何もないと思っていた。
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      案内板によると、高冷地の遠野はしばしば凶作に見舞われ、
      今から250年ほど前の大飢饉では多くの犠牲者が出たという。
      大慈寺の義山和尚がその供養に数年かけて五百羅漢像を彫ったとある。
      しかし、残るのは岩だけでは?と辺りを見ると...

      雪で浮かび上がる羅漢像

      雪で浮かび上がるのを見て、ようやく気がついた。
      辺り一帯の岩、全てに羅漢像が刻まれている!
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      前回来たとき岩の上を歩いてしまったが、何とも罰当たりだったな...
      雪で綺麗に浮かぶものだなと感動した。


      苔むす羅漢像

      雪のかからない影の岩もよく見ると羅漢像がいる。
      大小様々な岩ごとに異なる表情の像が刻まれている。
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      五百羅漢.stn → 「既定のプログラムから開くまでもない
      五百羅漢.jpg → 「ファイルが破損しているか、大きすぎる可能性があります」

      石に刻めば250年どころかロゼッタストーンのように千年単位で残るだろう。
      今のデジカメの写真って50年後に再生できるだろうか?
      銀塩ならネガ、ポジで長持ちするけど、デジタルは拡張子や記録媒体が悩みどころ。


      ●火防の神、愛宕神社

      五百羅漢の次は愛宕神社に寄った。
      案内板によると城下町を守る境の神とある。
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      旅立ちの安全祈願、山の神、出羽三山の旅行記念の碑が並ぶ。
      火防の神として愛宕さんが和尚の姿になって火事を消したと説話にある。


      ●縁結びの卯子酉様

      愛宕神社横にある卯子酉神社。
      昔、この辺りは大きな湖で、淵には葦が茂っていたらしい。
      そこの片葉の葦に願い事の紙を結ぶと叶うとのこと。
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      今は葦はないみたいだ。
      代わりに、木に張られた紐に願い事の赤布が下がっている。


      ●古来のハニートラップ@狐の関所

      カッパ淵の道中、狐の関所があったのでMuddyFoxとツーショット。
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      この前の飲み会帰り、土産を下げてここを通ったら、
      すっげえ美女が「風呂に入って酒っこあがんせ」って微笑みながら誘ってきたんだ。
      その晩は<自主規制>ったけど夢だったんだろうな、、、畜生...
      目が覚めると泥田の中にいて、土産は消えていたんだよ。
      まあ、お前も気を付けろよ。

      という事が案内板に書かれている。俺も気を付けよう。


      ●蓮峰山 常堅寺

      邪な話を読んだので、次は寺に行った。
      500年以上前に開かれたという常堅寺は遠野物語にも書かれている。
      ”土淵村大字土淵の常堅寺は曹洞宗にて、遠野郷十二ヶ寺の触頭なり”
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      病の老人が「ここ数日は気分いい!」と常堅寺へ出かけた。
      住職から茶をもらって話をして帰るが、門を出た老人の姿が見えなくなった。
      ふと畳を見ると、茶は畳の間にこぼれていて、老人はその晩に亡くなったという。
      遠野物語によると、こういう話は常堅寺の他、菩提寺という寺でもあったらしい。


      ●カッパ狛犬

      常堅寺境内のカッパ狛犬。
      「どこがカッパなんだよ」と思うかもしれない。 _DUN0360
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      気合の入った(物理的な)頭の刈り込みはカッパそのもの。

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      カッパ狛犬が守るお堂


      ●カッパ淵

      カッパで有名な遠野。そのカッパはどこからくるのか?
      遠野物語には「どこのカッパと寝たのよ!」的な話がある
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      話五十五:”△△村の〇〇の家にて、二代まで続けて川童の子を孕みたる者あり”
      このように、誰かさんの家でカッパが生まれたという話が残っている。
      カッパも”ヒト亜族”に属するのか?
      ※プライバシーに配慮して家名は伏してあります。

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      話五十五:”生れし子は斬刻みて一升樽に入れ、土中に埋めたり”
      続く話は傷害致死&遺体損壊・遺棄と罪のオンパレード。
      なかなか猟奇的な話だ。遠野残酷物語かな。
      見方を変えればAKIRAか?

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      池に馬を引き込もうと悪戯をする河童がいて懲らしめられる話もある。
      同胞であるカッパの赤子を殺した恨みでは?
      他人の罪に厳しいのが人間の性。


      ●デンデラ野、定年制度の難しさ

      期に寄ったのはデンデラ野。
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      高宝橋に親孝行のレリーフがついている。
      不自由ない現代では、そう見えなくもない。

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      息子に負ぶわれて老婆が行きつく先はデンデラ野。
      食べ物に不自由した昔、60歳を過ぎた者はここに姨捨されたという。
      なかなか定年にさせてくれない現代とは違うな。


      ●あがりの家(旧特別労働老人ホーム)

      デンデラ野に放たれた者は、昼間は麓の畑で農作業の手伝い、
      夜は”あがりの家”で身を寄せ合ってあがりまでを過ごしたという。
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      定年後でも養護はなく労働か。
      一億総活躍()を謳う現代に通じるものがある。
      しかし、当時の60歳の人はどれくらい動けたのだろうか。

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      家の中央にキッチン・暖房を完備

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      家の側面に冷房を完備
      自転車野宿旅なら帝国ホテルに値する

      字面の設備に抜け目は無くとも、実体は抜け目(隙間)だらけだ...
      長閑な原風景広がる遠野だが、昔の生活は相当厳しいものと感じられる。


      ●日暮れの遠野市街へ戻る

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      あらかた見たい場所を見て回り、日が暮れかけたので遠野市街に戻る。


      ●JR遠野駅ゴール

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      日没くらいに遠野駅に到着。
      冬用タイヤでないと岩手内陸は厳しいので、明日は宮城沿岸へ行こうと決めた。
      石巻までのんびり輪行して翌日は牡鹿半島を回った。


      ●跋文

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      正月2日に岩手内陸の遠野をサイクリング。
      遠野には春、夏、秋に何度か来ているが、今回の冬で四つの季節を回れた。
      暖冬で雪が少ないとはいえ、夜~明け方の路面は凍り付く寒さだった。
      春~秋の温い季節だと「遠野は長閑で良いなあ」と感じたが(実際そうだけど)、
      冬の寒い時期だと、高冷地ゆえの凶作・飢饉・姨捨と「遠野にも現実はあるなあ」と感じた。

      ※本記事中の遠野物語の解釈は多分に主観を含みます。