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マーモットのロングセラー商品、プレシップジャケット



●製品概説

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【サイズ】 M (C99-108cm,H167-178cm) ※inported
【カラー】 シトローネルグリーンランド
【耐水圧】 10,000mm
【透湿性】 10,000g
【重量】 312g
【備考】 ピットジップ、ロールアップフード

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米国アウトドアメーカー、マーモットのレインジャケット。
マーモット独自の防水・透湿性素材、PreCipを採用している。
ゴアテックスではないが、ベンチレーション機能の工夫で、汗蒸れに対処している。

本体の雨具用以外に、体温調節を目的とした防寒具としても優秀な性能を発揮する。
ピットジップの開閉によって、衣服内の風通しが効き、体温調節がしやすい。
ベンチレーション機能は、雨でも運動量の多い、サイクリング用途としても重宝する。

比較的、軽量かつ小型に収まるため、冬季を除く登山の装備に適する。
価格は15,000円前後で安定しており、本格的な山用雨具としてコストパフォーマンスに優れる。
ただし、裏地のPUコート生地の耐用性が低いため、同じ物を長く使う人にはお勧めできない。

●使用所感

主に2,000m前後の春~秋登山、オールシーズンのサイクリングで雨具および防寒具として使用。
・登山では、晴天でも防寒具として紫外線にバリバリ照射されたり
・サイクリングでは、雨の中、24時間以上屋外で着っぱなしで過ごしたり
・輪行時、自転車のチェーンオイルで汚れたり
などなど、作業着的な感じで2年半着続けて、このたび裏地の剥離で寿命と見込んだ。
雨具としての退役前に、感謝の意を込めて所感をまとめる。

●各部特徴

・ベンチレーション機能

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脇から脇腹にかけてのベンチレーション。※ピットジップというらしい。
着ているときに、開けるのは容易だが、閉めるのは生地が柔らかいために、少し難しい。
体質や、汗のかく量によりけりだが、開状態にすると生地内の結露が解消される。

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ピットジップに加えて、腹部のポケットもベンチレーションを兼ねている。
サイクリング時に開けておくと、襟元・腹部から入った風が脇から抜けていき、通気性は非常に良い。
登山においても、脇および腹部それぞれに通気口があるのは重宝する。
バックパックを背負うと、肩回りと腹部が肩紐で区切られるため、
片側のみの通気だと、脇から先ないしは腹部のいずれかが群れやすくなる。

ベンチレーション全開放で雨の進入は?
姿勢が直立の登山では、ベンチレーション全開放でも雨の進入はほとんどない。
前傾姿勢のサイクリングでは、生地を伝ってくる水はけ状態によって、雨の進入を許すこともある。
このあたりは適宜、雨量によってベンチレーションの開閉を調整する必要がある。

・袖および腰回り調整

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袖はシンプルにベルクロ調整

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腰回りには下からの風の進入を防ぐドローコート

・生地の防水・透湿性

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素材はナイロン100%
耐水圧は10,000mmと、ゴアテックスの上位モデルには劣る数値だが、軽登山までなら十分。
生地は柔らかいけど、そこそこ頑丈なので、藪漕ぎをしない登山ならば、十分対応できる。
雨具用途として、惜しむらくは裏地にポリウレタン(PU)コートがされていることか。

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裏返し状態
2年半、主にサイクリングでショルダーバッグを右かけして使用した状態。
摺動が続いた結果としてか、右肩~腕部分にかけて、裏地の剥離が認められる。
後述するが、水に合えば劣化する(加水分解)PUコートが本製品、唯一の弱点。

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マーモット独自:プレシップ素材の裏地
白地・幾何学模様の裏地が全域に敷かれており、汗のべたつきを抑えて肌触りをよくするらしい。
詳しい図解はマーモットのホームページにある。

携行性

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左からハイランドクリーム、プレシップジャケット、おなじみの山岳地図、スケール
畳み方、圧縮状態によるが、概ね500mlペットボトルのサイズといえる。

【改善要望】

裏地PUコートの剥離
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およそ2年半の使用で、夏山登山の防寒具から、雨の中24時間サイクリングしたりと、
開発者の想定よりも、おそらく、荒い使い方をした結果か、裏地の剥離が始まった。

剥離の著しい、右腕部周辺は、脱ぎ着するだけで、白い裏地がポロポロはがれて、
下に来ている服に剥離粉が付着してしまう、これはいただけない。

PUは伸縮および摩耗性に優れる素材として靴のソールなど、アウトドア製品に利用されているが、
材料が合成された時点で、緩やかにではあるが、劣化が進み、いずれはボロボロに崩れる。
参考:ポリウレタン素材の弱点を知る

PUの劣化を進める水および熱、この2条件が、雨具内の蒸れる(湿気+熱)環境に含まれる。
上記参考サイトでは、PU素材の衣服の寿命は、およそ2~3年としている。
水に合う雨具では、より短くなっても不思議はない。

マーモットが湿気の少なそうなアメリカのメーカーだからかは、わからないが、
高温多湿な日本の登山環境においては、PUコートの衣服は長く着られないといえる。
しかし、物は考えようで、ヘビーデューティー万歳のユーザがショートスパンで使うには良い選択。
逆に、一張羅を大事に、メンテして使うユーザは、少し高いゴア・PUフリーを選ぶのが賢明。

推察だが、PUコートは、表面のナイロン生地とプレシップ生地の接着に利用しているのだろう。
もしメーカーが改善するなら、PUをEVAなど、より高い耐水性および耐熱性を持つ素材に代替すべき。
登山靴のソールもかつてはPU全盛だったようだが、最近は少し寿命の長いエチレン酢酸ビニル系らしい。

●まとめ

お勧めできる用途、良い点・悪い点を以下にまとめる

【対応用途】
春~秋登山、トレイルランニング、サイクリング

【良い点】
・小型かつ軽量:携行性に優れる
・耐水性および保温性:レイヤリングをすれば冬季を除く山で対応できる
・ピットジップおよび効果的なベンチレーション:不快な蒸れがない

【悪い点】
・PUコート裏地の劣化:今回は2年しか持たなかった...

【総評】
春~秋の登山用雨具として、外れはない選択肢といえる。
比較的、運動量が多く汗をかく、荷物を切り詰め身軽に動きたい、といった
トレイルランニング・サイクリング用としても、通気性・携行性から優れた製品といえる。

購入する場合は、PUコートゆえに寿命は2~3年と見積もり、コストを考えると良い。
一日豪雨でもアウトドアだぜ!という雨具をバリバリ使い倒すユーザならば”買い”の製品。
朝から雨なら外に出ないし、服は5年以上、大切に使いたいというユーザは他上位モデルを買うべき。

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マーモットのロングセラー商品であるプレシップジャケット。
初めて袖を通したのは高校時代(もう10年前か...)山岳部にいたとき。
親父がアメリカ出張の土産で買ってきたモデルだった。
本記事で取り上げたモデルと違い、オレンジとカーキを混ぜたようなモノカラーのやつ。
ピットジップを含むベンチレーターは当時から変わらない。

高校の山岳部では、南アルプスや八ヶ岳を巡った。
南アの仙丈ケ岳、甲斐駒ケ岳では、霧雨だったが、あの時はよく働いてくれた。
初代は、大学に入って、秋保の林道で左袖が裂けたことが原因で逝ってしまった。享年4年
2代目は、まだ生きているけど、雨具としては扱えなくなったので、今後はウィンブレとして使う。